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ベトナムの市場調査をする前に担当者が抑えておきたい基礎知識

ベトナムに進出する企業のご担当者が最低限知っておきたいベトナムの市場調査に関する基礎知識をまとめてご紹介します。

1  ベトナムの概要データ

東南アジアの10カ国で唯一アメリカとのベトナム戦争を経て経済成長を続けるベトナム。
1986年からは経済開放政策を導入し、CLMV(アセアン後進国のカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)の中でも早くから経済成長の段階に進んでいます。

正式名称:ベトナム社会主義共和国(ベトナムしゃかいしゅぎきょうわこく)、ベトナムは東アジア・東南アジアのインドシナ半島東部に位置する社会主義共和制国家で国土は南北に長く、北に中華人民共和国と、西にラオス、カンボジアと国境を接し、東は南シナ海に面し、その先にはフィリピンと対しています。

国・地域名

ベトナム社会主義共和国 Socialist Republic of Viet Nam

面積

33万平方キロメートル(日本の88%)

人口

8,971万人(2013年出所:ベトナム統計総局(GSO))

首都

ハノイ 人口693万人、ホーチミン人口781万人(2013年)

言語

ベトナム語、ほかに少数民族語

宗教

仏教(約80%)、そのほかにカトリック、カオダイ教、ホアハオ教など

ベトナムの地理は南北1,650km、東西600kmに広がる国土です。同国の西側に平行して南北に伸びるチュオンソン山脈の東側に国土の大半が属します。国土は細長いS字に似たかたちで北部のデルタと南部のデルタ地区で人口の70%が居住しています。

北のデルタは紅河(ソンコイ川)流域で、首都ハノイのほか港湾都市ハイフォンがあります。
南のデルタはメコン川流域で、ベトナム最大の商業都市ホーチミンを擁します。

また同国がベトナム領域であると主張する南沙諸島:スプラトリー諸島で中国や台湾が実効支配を強化する動きを加速していることに対して反対の意見を表明しています。この南沙諸島をめぐってはベトナム、中国、台湾、フィリピン、マレーシア、ブルネイの6カ国・地域が領有権を争っています。

また2014年5月には南シナ海で石油掘削作業を進める中国への大規模抗議デモが発生。ベトナムが主張する排他的経済水域に、違法設置した中国海洋石油総公司の石油掘削リグをめぐり、ベトナムと中国の艦船の衝突が相次いだことにより発生しました。

2 ベトナムの民族構成

ベトナムの民族構成はキン族:ベトナム族が最大の民族で全人口の85%~90%を占めます。

ベトナムでは公式に認められている民族が54あり、キン族の言語であるベトナム語はムオン族・セダン族などと同じオーストロ・アジア(モン・クメール)語族に属します。それに続いてタイーTày族 (旧トー族) 1.9%、タイThái族  1.7%ムオンMường族 1.5%、クメールKhơ Me Crộm族 1.4%などが少数民族として、その他に少数民族としてホア族:華人、タイ系のヌン族、クメール族、ムオン族、モン族(ミャオ族)、ザオ族などがあります。多くの少数民族は山地に住むケースが多いのが現状です。

東南アジア各国で展開している華僑人口で、ベトナムではおよそ126万人(2012年統計)とされています。タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピンなどと比較するとそれほど多くない数字ですが、背景には1975年の中越戦争以降で、およそ110万人もの華僑がベトナム国外に脱出したとされています。

ベトナム華僑の大半がベトナム南部におり、1989年の統計によると、ホーチミン市の華僑が約52万人、ハノイの華僑は5千人以下となっています。

3 ベトナムの経済成長率

ベトナムの経済成長率は
実質GDP成長率は2011年+6.2%、2012年+5.3% 2013年+5.4%の成長率
名目GDP総額は2011年 1,236億USドル、2012年 1,558億USドル、2013年 1,712億USドル
と増加していて、
一人あたりのGDPは 2011年 1,532USドル、2012年 1,753USドル、2013年 1,902USドル
となっています。  ※ベトナム統計局 IMF統計データ2013年

ベトナムの一人あたりGDPは世界平均のおよそ20%程で、2011年にアジア開発銀行(ADB)が公表した資料で、ベトナム国内で1日2ドル未満で暮らす貧困層はおよそ3300万人と推定されています。

ベトナムは社会主義政策を導入していましたが1986年のベトナム共産党第6回大会で、社会主義政策に資本市場経済システムを取り入れるというドイモイ政策が採択されました。また1996年にベトナム共産党第8回大会で2020年までに工業国入りを目指す「工業化と近代化」を二大戦略とする政治報告を採択しています。

ベトナムの物価上昇率は東南アジア各国と比較してかなり高いレベルで推移していて2011年+18.6% 2012年+9.2% 2013年+6.6%とインフレ率が高いのが特徴です。一方で失業率はそれほど高くなく、2011年、3.6% 2,012年 3.2%、2013年3.6%となっています。

ベトナム経済はアメリカのリーマンショックで一時失速したものの、国内GDP成長率も、2007年+8.5%、2008年+6.3%、2009年+5.3%、2010年+6.8%と安定成長が続いています。2007年1月にWTO世界貿易機関に加盟し、経済成長に弾みが付きました。NEXT11やVISTAの一角にも数えられており今後一層経済の発展が予想されています。

ベトナムの総貿易額の金額(ドルベース)では
輸出  1321億3500万USドル (2013年)
輸入 1321億2500万USドル (2013年) となっています。

貿易品目に関しては
輸出上位品目   電話機・部品、縫製品、電子製品、原油、衣料品、農水産物等(コメ、コーヒー、茶、ゴム)
輸入上位品目   機械設備・同部品、コンピューター電子製品、織布・生地
となっています。

4 ベトナム政治体制

ベトナムの政体は社会主義共和国であり、チュオン・タン・サン大統領:国家主席Truong Tan Sangが2011年就任になっています。

議会制度 一院制 一党(ベトナム共産党)
議会概要は 議員数500名で2011年5月に総選挙が実施されていて任期5年です。グエン・タン・ズン(Nguyễn Tấn Dũng,阮晋勇)氏が第6代ベトナム社会主義共和国首相を務めています。2014年3月には チュオン・タン・サン国家主席が日本を公式訪問しています。

ベトナム共産党による一党独裁制度です。
ベトナム共産党の政治システムは、
1:最高職である党中央委員会書記長、
2:国家元首である国家主席、3:首相の3名を中心とした集団指導体制を採用しています。
2014年現在の党書記長はグエン・フー・チョン氏、国家主席はチュオン・タン・サン氏、首相はグエン・タン・ズン氏が務めています。

ベトナム社会主義共和国建国以来、一貫して集団指導による国家運営を進めてきました。
同国は1980年代まで民主党、社会党などの衛星政党も存在するヘゲモニー政党制でしたが1980年代末には解散、名目的な複数政党制から純粋な一党制に移行しました。

ベトナムの国会システムは一院制で憲法では「国権の最高機関」とされています。
定員500名、任期5年ですが一党独裁制のため機能や権力は有していません。この国会議員の全立候補者は共産党翼賛組織の「ベトナム祖国戦線」の審査で絞り込まれ国会議員の90%以上は共産党員となります。また選挙は18歳以上の国民による直接投票方式で行われます。

5 ベトナムの魅力とデメリット

ベトナムの魅力には

  1. 2007年からWTO世界貿易機構に加盟。高成長率の経済成長へ
  2. 2020年までに9800万人を越える予測の豊富な国内人口
  3. 低コストの労働力 労働者コストは200ドル~300ドル/月給
  4. メコン経済圏でのインフラ構築、道路整備

などがあります。

またベトナムの懸念材料では

  • まだボリュームゾーンの小さい中間層
  • 法制度の未整備 、汚職腐敗などのイメージダウン
  • 脆弱な物流インフラの問題
  • 2007年以降 高インフレ+貿易赤字+外貨準備不足、そして通貨安のダメージを受ける

1:2007年からWTO世界貿易機構に加盟。高成長率の経済成長へ

ドイモイ政策発表後の1995年ベトナムとアメリカは和解し、越米両国の国交が復活しました。
2000年には両国間の通商協定を締結して、アメリカがベトナムを貿易最恵国としたことで
自動車フォードやジェネラルモーターズ、飲料のコカ・コーラなど米系企業が進出しました。

日系企業も2001年キャノンが進出、2006年ブラザー工業が進出するなど大型投資が相次いでいます。
2012年には京セラ、ブリジストンなども大型投資を決定しています。
リクシル、東急電鉄も不動産開発などで進出を開始しています。

また2007年からはWTO世界貿易機構に加盟。高成長率の経済成長
2007年+8.5%、2008年+6.3%、2009年+5.3%、2010年+6.8%と安定成長が続いています。
ベトナム政府は、2011年~15年の5年間で年平均成長率7.0~7.5%を設定していましたが5%~6%台の成長になっています。ベトナム政府は2014年からの法人税率引き下げ(25%から22%へ)による国内企業の活性化、外資企業の誘致強化などの景気対策等を実施するとしています。

2:2020年までに9800万人を越える予測の豊富な国内人口

ベトナム国内人口は2013年統計データで9170万人で世界12位の人口規模となります。
東南アジアではインドネシア(2.5億人規模)、フィリピン(1億人規模)に次ぐ第3位になります。

ベトナム統計局GSOの2011年発表でベトナム都市部は2,688万人(30.6%)、地方農村部で6,096万人(69.4%)で農村部の人口比率が高い水準となっています。ベトナム政府は人口抑制と貧困解消のために、出生抑制政策を進めています。

同国の合計特殊出生率は、2008年2.1人から2010年には1.8人へ減少しています。
今後ベトナムのピラミッド型の人口構造は変化し、いずれ少子高齢化への道を進む傾向になっています。

ベトナムは60歳以上が人口に占める割合が10%程度と少ない一方で、30歳未満の若年層が国内人口の半数を占めています。若年層14歳以下の人口が全体の25%近くを占めています。この年齢層が数年後には毎年100万人程度新たに労働市場に参入する見通しです。2020年には9800万人を突破。その数年内に1億人を突破すると予測されています。

3:低コストの労働力 労働者コストは200ドル~300ドル/月給

ベトナムの労働コスト、インフラコストはアセアン諸国と比較しても低コストであることが魅力の1つとなっています。平均年齢は28歳でタイなどと比較して若い人口層が多い国です。チャイナ+1として中国からの次の進出先としても労働集約型、付加価値型として製造業の進出も増加しています。

しかしながら2013年11月ベトナム政府は最低賃金を引き上げる政令を発表。
ベトナムの最低賃金は発展段階に応じ4つの地域に区分し設定されていて最も高い第1地域ではこれまで235万ドン→270万ドル(2014年1月より)最低賃金が適用されました。この最低賃金の引き上げ率は月給で+15.2〜17.0%。

今後人件費の安さだけの魅力は薄れていくと見られています。
また、有能な人材の確保や、2015年のASEAN経済共同体、2018年のASEAN域内関税撤廃や
TPP環太平洋経済連携協定への参加を控えるベトナムとしての国際競争環境は厳しくなっていくことが予想されています。

4:メコン経済圏でのインフラ構築、道路整備

ベトナム連絡陸路、中越陸路、東西経済回廊、南部経済回廊などベトナム、ラオス、カンボジア、タイなどをつなぐインフラが構築されています。大メコン圏(GMS:Great Mekong Subregion)としてカンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム、中国南部の6地域はADBアジア開発銀行などの支援を受け経済協力開発プログラムを進めています。

その中で経済回廊インフラ構築は域内のヒト・モノ・カネの大動脈としての役割を進めるためダナン(ベトナム)~ムクダハン(タイ)~モーラミャイン(ミャンマー)の東西経済回廊、ブンタウ(ベトナム)~ホーチミン(ベトナム)~プノンペン(カンボジア)~シアヌークビル~バンコク~ダウェイ(ミャンマー)のGMS南部経済回廊

東西経済回廊は、タイとラオス国境をつなぐ第2メコン友好橋が2006年開通して以降、タイ・ラオス・ベトナム間の物流ネットワークが深まりインドシナ半島における経済大動脈として今後の役割が注目されているインフラです。
長期的にベトナム~タイをつなぐこれらの道路インフラがベトナム経済の成長を後押しすると予想されています。

懸念材料では

■ ボリュームゾーンの小さい中間層

ベトナムではまだ一人あたりGDP水準がようやく2000USドル(2013年:1900USドル)に届きそうなレベルで東南アジアの他国に比べまだまだ消費者の所得水準は低いレベルです。ユーロモニターによる2008年の調査ではベトナム国内での世帯所得5000ドル~35,000ドルの層”中間層”と分類した規模の推計を行ってみた結果およそ1300万人とされています。この層が2020年には4700万人まで増加すると予測されています。

中長期的にはベトナムの消費者が大きく増加することが予想されますが まだ一般消費者へ向けての物品販売、サービス提供などに大きな市場とならないのが現状です。また2,008年度の自動車の保有率もマレーシア(60.7%)、タイ(12.7%)、インドネシア(7.5%)フィリピン(11.4%)と比較してベトナムは1.1%と言うデータになっています。

■ 法制度の未整備 、汚職腐敗などのイメージダウン

ベトナム中央政府で政策決定が発表されても、実際の役所・現場までに到達するのに時間がかかり、実施がされていないことがあります。ベトナム官僚・役人の裁量の幅が大きく、不条理な対応をされるケースもあります。

また役人レベルでの汚職/腐敗の話も多く、問題発生時の対応や解決に時間を奪われるケースもあります。
不動産などは基本国家所有で有り、自由な開発/投資に制限が掛かることが多いのも特徴です。

■ 脆弱な物流インフラの問題

アジア有数の人口密集都市であるハノイ、ホーチミンの渋滞は年々悪化しています。
また物流インフラも十分とは言えず、今後の開発が期待されます。

2014年8月、清水建設、前田建設工業とのJVでベトナム初の地下鉄工事となるホーチミン地下鉄1号線CP1Bの工区を受注。ホーチミン市人民委員会と締結しています。ベトナム初の地下鉄インフラとなる予定で今後の開発でベトナムの大量輸送インフラの1つとなります。

またベトナム高速鉄道プロジェクトは、2007年ベトナム鉄道総公社がハノイ~ホーチミンを結ぶ高速鉄道建設計画があることを発表していました。同計画によれば建設中のパンアジア鉄道とも接続、雲南省昆明を経由してベトナム鉄道との乗り入れが行われる予定でした。しかしベトナム鉄道総公社は2013年3月費用が膨大な高速鉄道建設計画を中止し、従来鉄道路線の整備により時速200キロメートル以下の準高速鉄道化を行う案を発表しています。

■ 2010年以降 高インフレ+貿易赤字+外貨準備不足、そして通貨安のダメージを受ける

2010年、2011年と年率+20%を超えるインフレや通貨ドンの為替レートの減価圧力などに直面し、貿易赤字と外貨準備高不足でベトナム政府は金融引き締めを進めました。

リーマン・ショック後の世界同時不況への対応として2009年に実施した大規模な景気刺激策は、10年の実質国内総生産GDP成長率を前年比+6.8%まで回復させましたがインフレ圧力は衰えず徐々に高まり、同国のインフレ率(消費者物価指数=CPI=上昇率)は、2010年12月に+11.8%、2011年8月には+23%と高インフレを記録。2011年2月、ベトナム政府は市場レートに合わせるように、ドン通貨をー9.3%切り下げました。また2013年6月も中央銀行はドン通貨をー1.0%切り下げています。

このように一時的にはベトナム経済混乱の一因となり通貨危機へと陥る可能性も取りざたされました。背景のいくつかの要因にはベトナム国内の物価上昇と国内証券市場の大幅下落、および金融市場の規模の小ささ、脆弱性などが指摘されています。

6 ベトナムの歴史

ベトナムは古くから中国王朝との国境を接する地理的な要因から中国王朝からの侵略、攻撃を受けることが多く、中国漢王朝~唐王朝の紀元前111年~938年は中国からの支配と支配からの反抗の歴史が繰り返されます。

1009年、李公蘊によって李朝大越国が建国、ベトナムにおける長期的な統一政権が成立。
1225年 ~1400年 陳氏によって李朝が滅ぼされ、陳朝大越国が成立。
この時期に民族文字としてのチュノムが作られ、史書『大越史記』の編纂も行わました。
1532年~1786年 黎朝時代 レ・ロイが即位し、レ・タイ・ト(黎太祖)となります。国号をダイ・ヴィェト:大越としました。
1788年、ドンダーの戦いで昭統帝が阮文恵率いる西山朝軍に敗れて清に亡命、
これにより黎朝は滅亡しました。
1802年~1945年 阮朝:グエンちょう時代
西山朝に敗れて滅亡した広南国の生き残り阮福暎:グエン・フク・アイン/げんふくえいが
西山朝を打倒して樹立。現在のフエを首都としていました。また
1887年から1945年3月までは、フランス領インドシナとしてフランスの支配下でした。

1862年 壬戌条約 (第1次サイゴン条約)を締結。
1884年 甲申条約 (第2次フエ条約、パルノートル条約)によってフランスがベトナムを保護国化しました。

1940年 6月にフランスが降伏、同年9月に日本軍がフランス領インドシナに進駐した「仏印進駐」。

1945年 8月ベトナム八月革命が起こり、ベトナム帝国皇帝バオ・ダイは退位を宣言。
9月には、ホー・チ・ミンは臨時政府を代表してベトナム独立宣言しました。
その後 第1次インドシナ戦争(フランス vs ベトナム)が勃発。
1954年 7月ジュネーヴ協定の調印でベトナムの南北分断が完全固定化。

1965年 2月アメリカ軍による北爆によってベトナム戦争が開始。
1975年 4月サイゴン陥落によって、親米政権が倒される。

1976年 7月にベトナム社会主義共和国が成立して、統一ベトナムが実現し、ようやく
ベトナムの経済復興が始まります、1995年には東南アジア諸国連合(ASEAN)に加入、
同年8月にはアメリカ合衆国との和解を果たしています。

 

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