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フィリピンの市場調査をする前に担当者が抑えておきたい基礎知識

フィリピンに進出する企業のご担当者が最低限知っておきたいフィリピンの市場調査に関する基礎知識をまとめてご紹介します。

1 フィリピンの概要データ

東南アジアの10カ国で海外出稼ぎの割合が高く、人口規模アセアン2位のフィリピンは2014年に人口が1億人を突破し、経済成長がようやく始まった段階の国家です。フィリピンは、東南アジアに位置する立憲共和制国家です。同国は多数島国が連なる国家であり、フィリピン海を挟んで日本、ルソン海峡を挟んで台湾、スールー海を挟んでマレーシア、セレベス海を挟んでインドネシア、南シナ海を挟んでベトナムと対しています。

国・地域名

フィリピン共和国 Republic of the Philippines

面積

30万平方キロメートル (日本の80%)

人口

9,820万人(2013年出所:国家統計調整委員会(NSCB)

首都

マニラ首都圏(NCR) 人口1,254万人(2013年出所:NSCB)

言語

フィリピノ語、英語など

宗教

キリスト・カトリック教(82.9%)、イスラム教(5.1%)など

公用語

フィリピノ語、英語

フィリピンは7,109の島々からなる立憲共和制の国家になります。政治的な混乱を経ながら、ここ数年は高い経済成長率を叩き出していて内需と海外からの海外送金の流入によって経済の活性化が進んでいます。また、英語が話せる人材が多くいるため、セブ島などオフショア開発、コールセンターなどの事業で大きく成長している企業が増加傾向にあります。

2 フィリピンの民族構成

民族構成はマレー系が主体で華僑、スペイン系の民族等も数多く生活しています。フィリピンは100以上から一説には200近いとまで言われる民族からなる多民族国家です。

主な民族だけでもタガログ族、セブアノ族、イロカノ族、ヒリガイノン族、ビコール族、ワライ族、パンパンガ族があり、それ以外にも少数民族が多数存在します。ただしフィリピン人の大部分はマレー系の民族です。インド、中国、アラビア、スペインなどからの移民を祖先とする人々の混血などもあり、フィリピンの多様な民族を構成しています。

タガログ族はフィリピンで最も人口が多い民族で。主にマニラ首都圏や中部ルソン地方などで居住しています。総人口の中で2,000~2,500万人と推定されています。タガログ族はタガログ語が母語で、タガログ語はフィリピンの公用語であるフィリピン語のベースとなっています。

またフィリピンでは華僑の存在も大きく、中国人は古来から商業や貿易、流通などの分野で大きな影響力を持ちます。フィリピン華僑はその多くが福建省から移住して来ていて、この傾向はインドネシアと似ています。

3 フィリピンの経済成長率

フィリピンの経済成長率は経済好調を背景にして実質GDP成長率は2010年+7.6% 2011年+3.6%、2012年+6.8% 2013年+7.2%の成長率名目GDP総額は2011年 2241億USドル、2012年2502億USドル、2013年 2702億USドル

一人あたりのGDPは2011年 2,379USドル、2012年 2,612USドル、2013年 2,790USドルとなっています。  ※フィリピン統計局 IMF統計データ2013年

一人あたりGDPは世界平均のおよそ25%程で、2011年にアジア開発銀行が公表した資料では1日2ドル未満で暮らす貧困層は3842万人と推定、フィリピン国民の40%以上が同経済状態であるとされています。
※フィリピンの1人あたりGDPは2006年は1,405USドルで2010年では2,155USドルと2,000ドル台を突破。2013年は2,790USドルと成長を続けています。

物価上昇率は2011年、+4.6% 2,012年+3.2%、2,013年+3.0%
失業率は高い数字で2011年、7.0% 2,012年 7.0%、2,013年7.3%となっています。

フィリピン経済は1997年にタイのバーツ危機から、アジア通貨危機が発生すると、ペソ暴落に見舞われましたが大きなバブル状態ではなかったため周辺国タイ、インドネシア、韓国などよりも比較的軽微で済みました。

またフィリピンは出稼ぎ労働者:Overseas Filipino Workers(OFW)は世界で最も多い海外労働者であり、この海外出稼ぎ労働者(OFW)からの海外送金の総額は外資直接投資額を上回る数字で有り、フィリピンへ貴重な外貨をもたらしています。

フィリピンの総貿易額の金額(ドルベース)では
輸出  540億USドル (2013年)
輸入  617億USドル (2013年)となっています。

貿易品目に関しては
輸出上位品目   電子・電気機器(半導体が大半)、輸送用機器等
輸入上位品目   化学品など原料・中間財、通信機器、電子機器等、燃料:原油等、消費財

4 フィリピンの政治体制

フィリピンの政体は大統領を元首とする共和制国家です。フィリピンの大統領は行政府の長で大統領と副大統領は、同日に別枠で国民の直接選挙により選出されます。任期は6年で再選禁止となっています。
2014年現在ベニグノ・アキノ3世大統領:Benigno Aquino III氏が2010年5月10日の大統領選で当選していて任期6年を務めます。

フィリピンの議会制度は二院制で議会:上院定員24名、下院定数250名以下で任期は上院が6年(3年ごとに半数ずつ改選)、下院が3年になっています。

2013年5月にフィリピン国政・地方統一選挙が実施されました。本選挙は、6年ごとに行われる大統領選挙の間に実施された中間選挙です。上院選挙の結果は与党連合の圧勝で改選12議席のうち、9議席を与党連合:Team PNoyが占めました。また、2016年大統領選挙が予定されていて次期大統領候補をめぐって様々な政治的駆け引きが活発化するとされています。

2014年7月に任期が残り2年となるアキノ大統領は、下院で就任後5度目の施政方針演説:State of the Nation Address(SONA)を行っています。現在進んでいる政府支出促進計画:Disbursement Acceleration ProgramDAPの正当性を強調して経済分野では投資適格の格上げやインフラ整備を中心に説明しました。

また、フィリピンは軍事関係において親米の立場を取っていて2014年防衛協力強化協定(Enhanced Defense Cooperation Agreement: EDCA)に調印しました。

5 フィリピンの魅力とデメリット

フィリピンの魅力には

  1. 英語+フィリピノ語とオフショア開発、英語が通じる経済圏
  2. 2014年1億人を突破した豊富な国内人口
  3. 外資優遇措置を準備しフィリピン経済区庁(PEZA)などが協力
  4. 出稼ぎ労働者:Overseas Filipino Workers(OFW)からの資金
  5. 中国やベトナムに比べて人件費単価が安い

などがあります。

またフィリピンの懸念材料では

  • 治安の悪さ (毎年多数の銃撃死傷者が発生)
  • 政治力の弱さ、汚職腐敗などのイメージダウン
  • 失業率が高く(7%台~) 豊富な労働力は供給されるも転職回数が多い
  • 自然災害が多く、特に大型台風などでインフラを破壊される
  • 電力コストが高い

1:英語+フィリピノ語とオフショア開発、英語が通じる経済圏

フィリピンはオフショアサービス、IT関連、コールセンターサービスなどが発展しています。これらの会社は基本的に100%外資で出資で設立が可能です。(ただし株主が5人必要うち3人はフィリピンに居住する必要性)

同国で同様のサービスが増えているのは英語が公用語になっていて大学卒業レベルの人材だけではなく、工場のワーカーやショッピングモールの店員、タクシードライバーまで英語でのコミュニケーションが容易であることが特徴です。英語人材が豊富なことで海外とのコミュニケーションがしやすい環境下であるため英語オンライン教育サービス、コールセンター、ITオフショア開発などが盛んです。これらに加え、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業も成長しています。

2:2014年1億人を突破した豊富な国内人口

2014年7月にフィリピン政府の人口委員会は、同国の人口が1億人を突破した推計を発表しました。2010年時点の国勢調査で約9234万人でしたが、年に約+2%ずつ増加しています。同国の人口は2013年時点で世界12位となっていて、アセアン諸国では人口2億5000万人のインドネシアに次ぐ人口大国です。

また増加していく労働力が経済成長を押し上げる「人口ボーナス」が当面続きます。国際連合における世界の人口中位推計では、フィリピンの総人口は2028年に1億2300万人に達して日本を越える推計になっています。

また、国内人口平均年齢は23歳(2010年時点)と若く、購買意欲は旺盛です。フィリピンは個人消費がGDPの約70%を占めていて、ASEAN主要国の中でも高いレベルになっています。

3:外資優遇措置を準備しフィリピン経済区庁(PEZA)などが協力

フィリピンは外資獲得に積極的な方針を掲げ、投資する外資企業に対して多様で手厚い優遇制度を設けています。
フィリピン経済特区庁(PEZA:Phillipine Economic Zone Authority)やフィリピン投資委員会(BOI:Board Of Investment)などの許可申請によって外資税制優遇制度である投資優先計画(IPP:Investment Priorities Plan)に則した事業は様々な優遇を受けることが可能です。

主な投資奨励事業分野
・農業および農業ビジネス・漁業  ・創造産業・知的サービス業
・造船業  ・大規模集合住宅建設 ・鉄鋼業 ・エネルギー
・インフラストラクチャー(PPP:Public-Private Partnership含む)
・研究開発 ・グリーンプロジェクト  ・自動車(電気自動車含む)など。

4:出稼ぎ労働者:Overseas Filipino Workers(OFW)からの資金

フィリピン経済は900万人というOFW(Overseas Filipino Workers)、海外に出て働くフィリピン人労働者の送金によって支えられています。GDPにおける10%相当が海外送金で、2005年にはその額100億ドル(1兆円規模)を突破しました。また直近2013年には海外からの送金総額は約230億ドル(2.3兆円規模)とさらに成長しています。

国外で働くフィリピン人:OFW、Overseas Filipino Workerはこれまで建設労働者や船員、家政婦といった職種から、フィリピンでは高レベル人材の育成にも力を入れ、看護師や介護士、エンジニア、薬剤師といった技能が必要で
給与水準の高い職種のOFWも増加しています。

5:中国やベトナムに比べて人件費単価が安い

JETRO2012年資料ではマニラの月給平均が325USドル。セブは195USドル。となっています。
しかし、フィリピンの最低賃金は地域によってばらつきがあり、おおよそ200ドル~300ドルになっています。

また一方で フィリピンの失業率は一般公式統計では7%台で推移していますが民間調査会社発表では準失業者(安定的では無い職種に就いている層)を含めると20%以上である数値も発表されていて転職の多い文化、継続して同じ会社で勤務出来ない人材などの結果、最低賃金の上昇率も上がらない環境下になっています。

■治安の悪さ (毎年多数の銃撃死傷者が発生)

「国連薬物犯罪事務所」が世界各国の犯罪についての統計調査データ(2008)では殺人・強盗の事件が人口10万人当り何件発生したかを発表していて、

殺人事件  強盗事件
フィリピン   6.4件    9.5件
アメリカ    5.2件    141.8件
オーストラリア 1.2件    78.3件
日本      0.5件    3.4件
とフィリピンは殺人の発生率が高くなっています。

同じく日本の外務省は、世界の国・地域ごとに危険レベル情報を出していてレベル1~4の中でフィリピン北部はほぼ1ですが、南部のミンダナオ地方はレベル2以上に設定しています。

■ 治力の弱さ、汚職腐敗などのイメージダウン

フィリピンの経済発展は1960年代から反共の砦としてアメリカに軍事的、政治的に協力を進める代わりにアメリカより莫大な支援を受けて、マルコス独裁のもとに開発独裁を進めた結果、農業国から軽工業国へと変貌を遂げました。

1960年にはフィリピンは東南アジアで豊かな国へ成長しましたが1980年頃を境にマルコス大統領の独裁による政治腐敗や、1983年アキノ上院議員の暗殺事件などで1986年のエドゥサ革命によりマルコス政権が崩壊するとフィリピンの社会情勢は一気に政情不安状態に陥り、海外投資が冷え込みタイやマレーシアなどの他ASEAN諸国が急成長する中「東南アジアの病人」と言われるほど経済低迷、混乱が続きました。

■自然災害が多く、特に大型台風などでインフラを破壊される

ピナトゥボ山(Mt. Pinatubo)は首都マニラから95Km離れた、ルソン島西側にある火山です。
1991年に20世紀における最大規模の大噴火を引き起こしました。

2013年11月の台風30号:フィリピン名称ヨランダ台風は6000名以上の死者、28,000名以上の負傷者を出しレイテ島のタクロバンを中心に甚大に被害を引き起こしました。

2013年10月フィリピン付近を震源とするM7.2の地震がセブ島やボホール島であり、歴史的建造物の幾つかが甚大な被害を受けました。

活火山、大地震、大型台風の直撃などフィリピンの自然災害の脅威と甚大な被害は同国内の経済に大きな影響を与える一因になっています。

■電力コストが高い

日本やシンガポールよりもフィリピンの電気代は高い言われています。この電気料金がインフラ・企業コストを押し上げ収益を圧迫しています。フィリピンの電力代が非常に高い原因の1つが盗電です。盗電とはその名の通り、配電事業者と契約をしていない人が電線から電気を引き込んで使ってしまいます。

電力供給自体は、1990年代前半まで多発した停電などの問題は改善され、安定的な供給が実現されていますがフィリピン最大の配電会社Meralcoの電気販売料金は2002年~2007年過去5年で+40%以上上昇しています。

フィリピンの電力業界は、発電(国営と民間)・送電(国営)・配電(民間)と分かれていて配電事業者は複数ありますが1地域に1社のため結果独占事業になっています。

6  フィリピンの財閥

フィリピンでは華僑系財閥、スペイン系の財閥が多数を占めています。
様々な分野で国内海外問わず展開しています。

スペイン系 アヤラ財閥 Ayala Family

1800年代にスペインから移り住んだ大司教、アントニオ・ドゥ・アヤラ(Antonio de Ayala)がその始まり。Jamie Zobel de Ayala氏が率いるアヤラ財閥Ayala Corporationはフィリピンの複合企業財閥で最古,最大の財閥です。小売り事業、不動産事業Ayala Land, Inc、銀行事業Bank of the Philippines Islands通信事業、インフラ事業、再生エネルギー事業、食品事業などを手掛けています。またマカティ地区開発、大型複合商業施設Green Beltの開発も手掛けています。

  • Ayala Land(ALI) :アヤラ・ランド(不動産)
  • Ayala Corporation(AC) :アヤラ・コーポレーション(持株会社)
  • Bank of Philippine Island(BPI) :バンク・オブ・フィリピンアイランド(金融機関)
  • Globe Telecom(GLO) :グローブ・テレコム(携帯通信)
  • Manila Water Company :マニラ・ウォーター(水道)

華僑系 ゴコンウェイ財閥 Gokongwei Family

John Gokongwei, Jr.ジョン・ゴコンウェイ財閥はJG Summit Holdingsを中心に小売り、食品、航空、不動産、石油、繊維、通信を手掛けています。

  • JG Summit Holdings(JGS) :JGサミット・ホールディングス (持株会社)
  • Robinsons Land(RLC) :ロビンソンズランド(小売)
  • Cebu Air Inc (CEB)  :セブ・パシフィック航空(航空)
  • Universal Robina Corporation(URC) :ユニバーサル・ロビナ(食品)
  • Digital Telecoms Philippines :デジタル・テレコミニケーション・フィリピン(通信)

などを展開しています。

華僑系 シー財閥  Sy Family

シー財閥Sy Corporationはヘンリー・シーHenry Sy氏率いる華僑系財閥でフィリピンの大手商業銀行であるBanco De Oro(BDO)やフィリピンの小売り最大手SM Groupを展開しています。SM Prime Holding社、SM Land社、SM Investments社などを保有しています。

  • SM Prime Holdings(SMPH) :SMプライム・ホールディングス (持ち株会社)
  • SM Investments Corporation(SM):SMインベストメント (不動産・小売・金融)
  • SM Development(SMDC) :SMデベロップメント
  • Banco de Oro(BDO):バンクデ・オロ (銀行)
  • China Bank(CHIB) :チャイナバンク (銀行)、
  • SM Land :SMランド (旧社名Shoemart Inc) デパート・百貨店

華僑系 コファンコ財閥  Cojuangco Family

Jose Cojuangcoホセ・コファンコ氏が率いる持ち株会社であり経営代理会社でもあるホセ・コファンコ・アンド・サンズ社(JCSI)の下に砂糖農園・砂糖精製・不動産開発などの企業を展開しています。

  • San Miguel Corp (SMC) :サンミゲル・コーポレーション(ビール飲料)
  • San Miguel Pure Foods Co(PF) :サンミゲル・ピュア・フーズ(食品)

華僑系 ユーチェンコ財閥   Yuchengco Family

保険会社の設立にその起源を持ち、マラヤン保険会社として大規模事業化して銀行業・投資・貿易・建設・通信・製造業へと多角経営を図っていきました。

  • House of Investments(HI) :ハウス・オブ・インベストメント (持株会社)
  • Rizal commercial Banking Corp(RCBC):リザル・コマーシャルバンク銀行)
  • EEI Corporation :EEIコーポレーション(建設)
  • Ipeople Inc (IPO) :アイピープル(情報通信・教育)
  • Great Pacific Life Assurance:グレートパシフィック・ライフアシュランス (生命保険)

華僑系 ルシオ・タン財閥 Lucio Tan Family

中国名は「陳永栽」で中国福建省生まれの移民1世となります。フィリピン航空(PAL)を経営しているフィリピン有数の一族として有名であるがそれ以外にもタバコ産業、銀行業、飲料・アルコール事業などでも傘下企業を展開しています。

  • Philippine Airlines(PAL) :フィリピン・エアライン (航空)
  • Allied Banking Corp(ABC) :アライド・バンキング・コーポレーション(銀行)
  • Philippine National Bank(PNB) :フィリピン・ナショナルバンク(銀行)
  • Philip Morris-Fortune Tobacco:PMFTC (未上場) フィリップモリスフォーチュン・タバコ (タバコ)
  • Asia Brewery(未上場) アジア・ブリュワリー (飲料・アルコール事業)

などを展開しています。

華僑系 ロペス財閥 Lopez Family

ロペス財閥はスペイン人と華僑の混血で通信・インフラ関連(発電、不動産、高速道路、水道)で数多くの企業を展開している企業です。

  • Lopez Holdings Corp (LOPEZ) :ロペス・ホールディングス (放送・通信・電力・不動産)
  • ABS-CBN Holdings(ABS-CBN) :ABS-CBN ホールディングス(フィリピン最大のTV局)
  • Manila Electric Com(MERALCO):マニラ電力(電力)
  • First Philippine Holdings(FPH):ファースト・フィリピン・ホールディングス(電力・不動産・製造)
  • First Gen Corporation(FGEN):ファースト・ゲン・コーポレーション(発電)
  • Energy Development Corp (EDC):エナジー・デベロップメント(地熱・発電)
  • Rockwell Land Corporation(ROCK):ロックウェル・ランド(不動産)

などになります。

7 フィリピンの歴史

ヨーロッパ列強に東南アジアが植民地化される中、スペイン艦隊は太平洋を横断しメキシコから到達。1521年、セブ島にポルトガル人の航海者マゼランが率いるスペイン艦隊がヨーロッパ人として初めてフィリピンに到達しました。マゼランはマクタン島の首長ラプ・ラプに攻撃され戦死します。『マクタン島の戦い』

1494年 スペインとポルトガルが結んだトルデシーリャス条約で新大陸がスペイン領有、
1529年 サラゴサ条約でフィリピン諸島をスペイン領有としています。
その後スペインはフィリピンをアジア進出の拠点としました。
1571年 マニラ市を植民地首府として、フィリピン諸島の大部分がスペインの領土となりました。
その後はスペイン統治下でメキシコやペルー、ボリビア~中国・アセアン各国で取引するガレオン貿易(1572~1815年)が盛んに行われました。

19世紀末 フィリピン国内で独立運動が本格的になり始め、フィリピン独立の父とされるホセ・リサールが独立運動を進めていきます。(※1896年銃殺される)

1899年6月、初代大統領エミリオ・アギナルドの下、独立宣言されフィリピン第一共和国が成立。
1898年のパリ条約によりフィリピンの統治権がスペインからアメリカに譲渡されます。
1899年~1902年  フィリピン・アメリカ戦争
1916年 アメリカ合衆国議会がフィリピン自治を承認しフィリピン自治領が成立。
1934年 アメリカ議会はフィリピンの10年後の完全独立を認めます。

1941年 日本軍が米軍を放逐しマニラに上陸。日本軍は1942年フィリピン全土を占領します。
1945年 日本敗戦。フィリピン第三共和国が再独立します。

1965年 フェルディナンド・マルコス大統領がマルコス独裁国家体制を築いてアメリカからの指示を受けて20年に渡る長期政権となりました。
1986年 「エドゥサ革命」によってマルコス政権は崩壊して、フィリピン第四共和国体制が成立します。
1990年 冷戦終結を受けた米軍のアジア駐留軍縮小、ピナトゥボ火山の噴火に伴うアメリカ軍基地機能の低下で、米軍はフィリピンから撤退します。

2001年 アロヨ大統領就任
2010年 ベニグノ・アキノ3世大統領就任
2014年現在、東南アジアではベトナム・インドネシアと共にNEXT11の一角にも数えられていて長期的に経済発展が期待できる新興国の一つに含まれています。

8 フィリピンの3つの大きな特徴

東南アジアの一角を占めるフィリピンでは3つの大きな特徴があります。

【1】 アセアンで人口構成が極めて若い
【2】 OFW海外送金による国内内需の活発化
【3】 フィリピン大規模インフラ投資計画

【1】アセアンで人口構成が極めて若い

フィリピン国内の人口統計データでは 9344万4000人(2010年)から2014年度には1億人を突破。
また1億1040万3000人(2020年予測)と+1695万9000人増となる見通しで綺麗なピラミッド型を構成しています。2040年には1億4000万人まで増加すると予測されています。
国内人口の60%弱がルソン島に居住していて、マニラ首都圏人口は約2,000万人でフィリピン最大の経済圏となっています。

フィリピンの人口年齢構成を見ると、平均年齢は21歳と非常に若い層が多く20歳以下が人口の半数近くを占めていてアセアン各国の中でも若年層が極めて多い人口構成をしています。この若い人口層が今後も増え続けることで、労働者人口、生産層がさらに増えて、経済的にも安定期に入ることが予想されています。

またこの流れに合わせ、フィリピンの都市圏では近代的ストアが増加していて近代小売業では、HM、SM、CVS、ショッピングモール、百貨店などの業態が成長しています。多くのショッピングモールが開発、増加していて、その数は大小含め100箇所になります。フィリピンの財閥企業 SMグループとロビンソン・グループはモール開発の大手企業で、SMモールはおよそ40箇所、ロビンソン・グループはおよそ30箇所のショッピングモールを展開しています。メガ・モールも登場していて、さらなる近代的なモールの成長が続くと見られています。

【2】OFW海外送金による国内内需の活発化

フィリピン経済は900万人というOFW(Overseas Filipino Workers)、海外に出て働くフィリピン人労働者の送金によって支えられています。GDPにおける10%相当が海外送金で、2005年にはその額100億ドル(1兆円規模)を突破しました。また直近2013年には海外からの送金総額は 約230億ドル(2.3兆円規模)とさらに成長しています。

フィリピンはGDPに占める家計消費支出割合が高い国で70%と言う数字で消費が多い国家です。
背景にはOFW海外出稼ぎ労働者からのフィリピンへの海外送金が貢献していて実際、フィリピンの貿易収支は長年赤字で2006年もー76億ドルの赤字2013年度はー185億ドルの赤字となっています。

ただしこの貿易収支は徐々に改善傾向となっていて2010年に就任したアキノ大統領(現職)は汚職撲滅や財政改善、投資環境整備など様々な問題に取り組んできた結果2011年頃からセイコーエプソンやブラザー工業など様々な日系企業が投資進め、輸出拠点として活用を始めて来たことが大きな要因になっています。
中長期的に製造業の成長がフィリピン経済に寄与していくと考えられています。

【3】「フィリピン中期開発計画2010-2016」

フィリピン中期開発計画Medium-Term Philippine Development Plan (MTPDP2010-2016)はフィリピン国家の社会経済開発の最上位計画です。同計画は国家経済開発庁(NEDA: National Economic Development Agency)が中心となって策定されます。MTPDPには、主要な政策方針、社会経済戦略、国家に関する主要なプログラムが含まれます。

同庁によれば2013年~16年の公的インフラ整備案件は計画段階を含めて952件。総投資額はおよそ467億ドルとなります。

財源や計画に関して、フィリピン政府単独~官民のパートナーシッププロジェクト、また政府開発援助ODAまで幅広く利用していくとしています。

9 フィリピンの経済概要

2010年 +7.6%成長、2011年 +3.9%成長
2012年 +6.8%成長
平均成長率が+7%前後で高い経済成長を見せるフィリピンは今後、人口が1億人を超え、2050年には総GDPが1.7兆ドルとなり規模感ではインドネシアやマレーシア、タイなどに近い成長と市場規模が期待されています。

フィリピン経済は多くは中華系華僑の財閥グループ、スペイン系財閥グループの2つに分かれます。
2013年フォーブスのランキングでは以下のようになっています。
シー財閥Sy Corporationはヘンリー・シーHenry Sy氏率いる華僑系財閥でフィリピン最大の商業銀行であるBanco De Oro(BDO)やフィリピンの小売り最大手SM Groupを展開しています。SM Prime Holding社、SM Land社、SM Investments社などを保有しています。

2013年 120億USドル
ルシオ・タン:Lucio Tan氏率いるルシオ・タン財閥Lucio Tan
タバコ事業Philip Morris-Fortune Tobaccoフィリップモリスフォーチュン・タバコ
ビール事業Asia Breweryアジア・ブリュワリー
洋酒事業Tanduay Holdingsタンドゥアイ・ホールディングス
銀行事業Philippine National Bank フィリピンナショナルバンク
航空事業Philippine Airlines フィリピンエアラインなどを展開しています。
2013年75億USドル
フィリピン・華僑資本のAndrew Tan氏はAlliance Global Groupを中心に
食品・飲料産業、Emperador Distillers Incorporation (ブランデー)
Golden Arches Development Corporation(マクドナルド)
不動産事業Megaworld Corporation
娯楽産業Resorts World Manilaを展開しています。

2013年46億USドル
港湾運営大手インターナショナル・コンテナ・ターミナル・サービシズ(ICTS)を保有するエンリケ・ラソンEnrique Razon氏。19カ国で27湾岸ポートを管理しています。またカジノ企業のBloomberry Resorts社を購入しています。

2013年45億USドル
John Gokongwei, Jr.ジョン・ゴコンウェイ財閥はJG Summit Holdingsを中心に小売り、食品、航空、不動産、石油、繊維、通信を手掛けています。
小売り大手事業: ロビンソンズランドRobinsons Land
航空事業:セブ・パシフィック航空Cebu Pacific Air
通信事業:Digital Telecommunications Philippines&Sun Cellular
不動産事業:シンガポールランド Singapore Land
食品事業スナック:Universal Robina Corporationなどを展開しています。

2013年34億USドル
Jamie Zobel de Ayala氏が率いるアヤラ財閥Ayala Corporationはフィリピンの複合企業財閥で最古,最大の財閥です。
小売り事業、不動産事業Ayala Land, Inc、銀行事業Bank of the Philippines Islands
通信事業、インフラ事業、再生エネルギー事業、
食品事業などを手掛けています。またマカティ地区開発、
大型複合商業施設Green Beltの開発も手掛けています。

2013年31億USドル
Aboitiz Equity Venturesを率いるジョン・アボイティス氏はアボイティス財閥をセブ島開発を中心に財を成し 電力 Aboitiz Power銀行 Union Bankや 不動産、建設、造船、娯楽事業の複合企業です。

2013年30億USドル
David Consunji氏が率いるDMCI Holdings, Incorporated(DMC)を展開する財閥です。マルコス政権下で大きく成長し
石炭採掘事業:Semirara Mining Corporation(SCC)
建設事業:DMCI Holdings, Incorporated(DMC)などを展開します。

George Ty氏が率いるGeorge Ty財閥は第2位のメトロバンク銀行を展開していて
不動産事業:GT Capital
自動車事業:Toyota Motor Philippines
生命保険:Philippine AXA Life Insuranceなどを展開します。

トニータン・カクチョンTony Tan Caktiong氏率いる
外食レストラン事業:Jollibee Foods(JFC)、Chowking, Greenwich Pizzaで2,200店舗を展開しています。

Robert Coyiuto Sr氏が率いる財閥は保険事業:Prudential Guarantee & Assurance(未上場)でフィリピン最大の保険会社になります。自動車事業:PGA Carsなども展開しています

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