タイ人の40%以上が債務を抱え、一人当たり平均10万バーツ以上の金額【タイ:金融】

TTBアナリティクスのタイの家計債務分析によると、所得の伸びが支出に追いつかず、退職後も続く債務サイクルにつながっていること、そして、タイ人の40%が債務を抱えており、平均債務額は1人当たり10万バーツを超えていることが判明しました。
過去10年間で、タイの家計債務問題は深刻化し続けており、経済の安定性や国民生活の質に広範な影響を及ぼし始めています。
これは、2024年第3四半期時点での家計債務残高が約16.3兆バーツに達し、GDP比で89%となっていることからも伺えます。
2023年のピークからは若干減少しましたが、これは主に新規融資の抑制によるものであり、債務返済が進んだ結果ではありません。
タイの家計債務の水準は、同程度の一人当たり所得を持つ他国と比べても依然として高い状況にあります。また、コロナ禍中の支援策終了後、債務の質も悪化しています。
ttb analyticsは、国家信用情報会社(NCB)のデータベースから8,400万件以上の匿名債務者アカウント(総債務残高13.6兆バーツ以上)を分析し、次の5つの懸念事項を明らかにしました。
1:タイ人の約40%が制度内で債務を抱え、一人当たりの平均債務額は10万バーツ超
NCBのデータによると、制度内で債務を抱えるタイ人の割合は、2018年の31%から2024年には38%に増加しています。
これは、コロナ禍での金融緩和や融資へのアクセスが容易になったことが影響しています。
また、不良債務を抱える人の割合も、2018年の17%から2024年には22%に上昇しています。
一方、すべての年齢層における債務額(中央値)は、14.8万バーツから11.8万バーツへとやや減少しています。
2:家庭形成期の世代が最も多くの債務を抱えている
35〜50歳の家庭形成期にある人々が、債務者全体の62%を占めています。
主な債務内容は、個人ローンが43%、次いで自動車ローンが23%、クレジットカード債務が17%となっています。
さらに、この世代は住宅ローンを新たに抱えるケースも多く、長期にわたる返済負担が生じています。
このため、一人当たりの平均債務額は約15.4万バーツと高水準になっています。
3:ファーストジョブ世代は、バイクローンや個人ローンから債務が始まる傾向
近年、債務を抱え始める年齢が若年化しており、25〜29歳のファーストジョブ世代(約460万人)のうち、57%以上がすでに何らかの債務を抱えています。
特に20〜22歳の若年層は、バイクローンと個人ローンを中心に債務を抱え始めるケースが多く、それぞれ41%、43%の割合を占めています。
さらに、バイクローンにおいては、この年齢層の20〜30%が不良債務に分類されています。
4:債務者は個人ローン依存に陥りやすい
20〜80歳までのすべての年齢層において、債務者の40%以上が個人ローンを利用しています。
また、住宅ローンや自動車ローンを持たない債務者の間で、個人ローン口座数は約1,210万件に達しています。
住宅ローンや自動車ローンと併せ持つ個人ローン口座も、全体の28.2%(660万件)を占め、2018年の26.2%から増加しています。
これは、一般的に働き盛り世代で増えるべき住宅ローンや自動車ローンよりも、個人ローンへの依存が高まっていることを示しています。
5:退職後も3人に1人が債務を抱え、そのうち10%以上が不良債務
NCB(ナショナルクレジットビューロー)のデータによると、2024年時点で60~80歳の人口の29%以上が、依然として金融システム内で借金を抱えていることがわかりました。
これは2018年の同年代の20%から増加しています。
また、1人あたりの平均借金額も依然として高く、約10万2,000バーツに達しており、これは働き盛りの25~35歳の平均借金額(約9万7,000バーツ)よりも多い水準となっています。
さらに、60~70歳の年齢層における不良債権(NPL)の割合も高く、全体の14%を占めています。
この層は、老後の収入を得る能力が低下している一方で、年齢とともに増加する医療費負担により、慢性的な問題となりつつあります。
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